欠陥住宅をつかまないために[契約時編]
契約時編 | 宅地探し(地盤調査)編 | 建売住宅購入前編 | マンション編 | 工事中編 | 最終チェック編
住宅のトラブルを未然に防ぎ、真っ当な建物を手に入れるには、良心ある建築士のチェック・監理が必要であるということが、だんだんとユーザーに認識されてきました。
欠陥住宅をつかまないためには、事前に建築や契約について一通り勉強して注意点を把握し、第三者の専門家のアドバイスを受けて正しい契約を行い、基礎工事、上棟時、引渡時には第三者の建築士に立ち会ってもらうことが重要です。
しかし、思い込みと現実とのギャップはまだまだ深いようですし、質問も後をたえません。
欠陥住宅をつかまないための注意点として、契約時、宅地探し、建売住宅購入前、マンション、工事中、最終チェック編の6編にわけてまとめました。
契約書は何度も読みかえして確認しよう
「本当にその契約書・設計図書で工事請負契約して大丈夫ですか?」
カテゴリー
契約前の注意点|業者の選択|有名建築士|契約書の注意点|図面・仕様書・見積書の注意点|工事請負契約の流れ|見積書の内訳明細|確認申請添付図面|設計図書|契約約款
Q1:これから建築契約をしようとしています。まず先に、何に注意をしたらよいでしょうか?
A:家を買ったり建築したりするときは、何か決断する原因があることが多いと思います。そのため、長年構想を温めてきた人も、急に必要に迫られた人も性急になりがちです。まず、その、せいた気持ちを落ち着けて下さい。
あらためて情報を調べたり、知人の話を聞いたり、目の前に見えたものが素晴らしく感じられても、ちょっとブレーキをかけてください。あせらないこと、それが建築で失敗しないために大切です。
Q2:どの業者と契約するか悩んでいます。業者を選ぶ基準はありますか?
A:絶対に欠陥住宅を建てない業者がいたらな、と思います。しかし、現実を見ると、そのような業者を探すのは大変むつかしいことです。欠陥住宅は、有名な全国的住宅メーカーから地域の業者まで、様々な業者で発生しています。最近は、センスが良いコピーライターが多数いますから、人にやさしいとか、自然志向とか、家族のふれあいとか、心に訴えかけてきます。けれど、宣伝は、しょせん宣伝でしかありません。
業者を選ぶ基準、むつかしいテーマですね。ところで、みなさんも感じたことはあると思いますが、建売建築と注文建築、それぞれ別の個性がある建築です。では、建売建築と注文建築の両方を扱っている業者に、注文建築を発注するのはどうでしょうか。その業者は、自分のところは扱い量が多いから材料が安く入るので、割安に品質の良いものを提供できると言うでしょう。でも、その業者の建築スタイル・建築の品質基準・下請けの技術が建売建築の世界に固定されているとしたら、注文建築でありながら建売建築のような建築になってしまいます。ですから、注文建築は注文建築の業者に頼むべきでしょう。
→ マンションの施工業者の選択方法については、マンション編へ
Q3:コンクールに入賞した有名な建築士に依頼しようと思います。大丈夫ですよね?
A:コンクールはコンクールの基準であって、実際の建築と相違するような気がします。コンクールに入賞し、著書も出版されている建築士の設計が、建築確認で80箇所も訂正させられた例があります。建築主との対話を謳い文句に設計するという建築士もいます。それなのに、通常の監理ができていなかったり、こまったものです。だから、ブレーキをかけてください。コンクールの勲章や謳い文句は、飾りなのだと。
建築士の実力を知るには、その建築士が設計・監理したものをみせてもらうしかありません。建築士を選ぶ時には、巷の評判を聞いたり、少なくとも2~3件はその建築士の作品を見たりした上で、「やはりこの人に依頼したい」と確信がもてたら頼むべきでしょう。
Q4:契約書の注意点を教えて下さい。
A:契約書は印鑑を押す前にもらって、事前に内容をきちんと確認しましょう。契約書で大事なのは、添付されている図面・仕様書・見積書です。契約書にきちんとした図面・仕様書・見積書が添付(一体となっている)されていない場合は、契約を止めましょう。
注文者と業者は対等な契約当事者なので、注文者側の要望は遠慮せずに業者にきちんと伝え、納得いく契約内容となっていることを確認してから契約を結ぶことが大切です。
契約書の本文は、ごく一般的には短い方が建築主に有利なことが多いので、文字の多い契約書はじっくり読んでください。注意する点は、瑕疵担保責任の期限(=保証期間)です。
住宅の品質確保の促進等に関する法律で、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分は瑕疵担保責任が10年となりました。でも、それ以外の部分は、契約書では引渡から1年とか2年になっている例が多いようです。会社によって保証期間に違いがありますので、長いほうを選択するのが賢い業者選びです。
その他、注意する点は、代金の支払時期、引渡時期、引渡が遅れた場合の補償、紛争の解決方法でしょう。
○注文住宅の場合
注文住宅を建てる場合、あなたはマイホームを見ないで一生に一度という大きな買い物をします。このため、この契約は相当の注意を払う必要があります。「書類による取り決めがすべて」ということをよく頭にたたきこんで、隅から隅までじっくり見て、納得してから契約するようにしたいものです。書類の内容は、弁護士・建築士などの第三者の専門家に見てもらいましょう。
注文住宅を契約する場合、次の5つの書類をハウスメーカー・業者にそろえてもらって下さい。
工事請負契約書
引渡し時期や請負代金、支払方法などの重要事項を記載。契約内容が明確に定められているか確認すること。建設業法19条では、契約書面に工事完成の時期、遅延損害金などの一定の事項を記載することが義務付けられています。
契約約款
契約書と一対になっている契約の詳細を網羅。建設会社に一方的に有利な約款内容となっていないか注意すること。
設計図書(設計図・仕上げ表・仕様書)
平面図・立面図から構造の詳細図まで各種の図面と仕上げ材料の一覧表。図示できない事項は仕様書に記載
見積書(工事費用内訳明細書)
材料の種類と単価、数量、各種工事代金を記したもの。その合計が請負代金
工程表
工事のスケジュール表
○建売住宅・マンション・中古住宅の場合
建売住宅やマンション、中古住宅などすでに建っている住宅を買う場合には、工事請負契約ではなく「不動産売買契約」、つまり売買契約書によって、すでにある建物が確実に手に入るかどうかが重要です。
このほかに、宅地建物取引業法では、売買契約を結ぶ前にその土地や建物にまつわる重要な事項を文書にして説明することを義務づけていることから、「重要事項説明書」を交付してもらうことも忘れずに。重要事項説明書は、売買契約書と重複する部分が多いので、両者の食い違いがないかチェックすることが大切です。
なお、売買契約で、完成前物件を買う場合(いわゆる青田買い)には、注文住宅の場合と同じように設計図書等のチェックが欠かせません。
売買契約書のチェックポイントは次のとおりです。
物件の表示と価格
物件の所在、地目、地積などが明記されているか。価格は明快に記載されているか。
手付金
手付金の扱いに関する条項が明記されているか(不動産業者が自社物件を売る時の手付金は売買代金の20%以内と定められている)
代金の支払、所有権移転及び引渡し時期
代金は数回に分けて支払うのが一般的、また所有権の移転および引渡しは全額支払った後が普通。融資の実行時期との関連は大丈夫か(ローン特約条項を必ず入れる。)引渡し時期は明記されているか。
瑕疵担保
契約時に発見できなかった欠陥があるとき、損害賠償や契約解除の取り決めはあるか。
Q5:図面・仕様書・見積書が簡単すぎますが、これでよいのでしょうか?
A:とりあえず、これで契約をと急がされていませんか。急いで契約しても、早く建築できません。きちんとした図面・仕様書・見積書がなければ建築は始まらないのです。または、「いま契約すれば決算期なので安くなります、設計は後でも変更できますから」こう言って、業者に契約を急がされていませんか。ブレーキをかけてください。一度契約した図面・仕様書・見積書は簡単には変更できません。
建築確認の図面だけでは通常少なすぎます。どれだけの図面があったら良いかは建築士と相談してください。建物によって異なりますから。口頭の約束では責任追及できません。図面・仕様書・見積書が整備されていれば、業者も誤魔化しやすさの程度が違います。
業者は契約を急がせますと書きましたが、大きな会社になると、営業部門に、のんびりした人や会社の利益を考えていないような変人を配置したりもします。そういう人に出会うと、この会社なら欠陥住宅とは無縁と思ったりします。でも、そういう営業部門と施工部門はちがいます。業者の実態を見抜くことは、困難です。せめてブレーキをかけて考えてください。魅力的な謳い文句に飛びつかないで。
Q6:工事請負契約流れを教えて下さい。
A:工事請負契約の流れは下記のようになります。
設計図書の完成
↓
見積書の作成
↓
予算オーバーよる設計変更
↓
再見積書の作成
↓
契約
設計図書=大きく分けて設計図、仕様書から成り立っている。
設計図=設計内容を図面として表現したもの
仕様書=図面では表すことのできない事を文字で表現したもの。仕上表等。
Q7:見積書に内訳明細がなく、「木工事一式○○円」「給排水衛生設備工事一式○○円」となっていますが大丈夫でしょうか?
A:内訳明細なしで工事金額が決まるはずがありません。このままで契約してしまったら、自分の意図に反する安い材料を使用されても、後で何も言えません。
Q8:設計図には確認申請添付図面しかないのですが大丈夫でしょうか?
A:確認申請添付図面では家は建ちません。その他に、各階伏図(基礎伏図等)、構造図、矩計図等多くの図面が必要です。また、仕上表、外部仕様書、等の仕様書も必要です。設計図書一式がなければ正確な見積金額は出ません。設計図書がないのは、後のトラブルの元です。なぜなら、図面がなければ何を造るかという約束ごとがないわけですから、後で「打合せと違う」と言っても、図面に明記されていないと、「そんなことを言った覚えはない」と言われれば、言った言わないの争いになります。
Q9:設計図書が一式揃っていないのですが、工事監理に支障がありますか?
A:工事請負契約とは、業者が設計図書通りの建物を造って引き渡し、建主がそれに対してお金を支払うことを約束した契約です。工事監理は「工事が設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」ですから、設計図書が揃っていなければ、その部分は確認のしようがありません。設計図書がなければ「工事監理をしない(させない)」と言っているようなものです。
設計図書には下表のものがあります。注文住宅の場合、これらの設計図書一式をきちんとそろえるには、実施設計が必要となります。実施設計はサービスでできるようなものではありません。企業によっては契約以前に実費を取って実施設計するところもあり、むしろこちらが本来の姿といえるでしょう。
建売住宅やマンション購入時にも、設計図書にはもちろん目を通す必要があります。構造や性能について、自分で調べても分からないときには専門家に頼んでみてもらいましょう。
● 設計図書の種類と内容(木造住宅)
種 類 | 内 容 |
付近見取り図 | 現場付近の見取り図 |
配置図 | 建物が敷地にどのように配置されているか |
面積表 | 敷地や建物の面積 |
平面図 | 間取り、柱や筋違の位置 |
立面図 | 東西南北からみた建物の外観 |
断面図 | 建物を縦に切った断面 |
矩計図(断面詳細図) | 断面図の詳細なもの |
基礎伏図 | 基礎やアンカーボルト、換気孔の位置 |
床伏図 | 土台や梁、根太など床組み |
小屋状図 | 屋根が乗る小屋の骨組み |
軸組図 | 柱、梁、筋違の位置とサイズ |
展開図 | 室内側の壁面を図示、窓やドアの位置 |
建具表 | ドアや窓、襖の一覧 |
設備図 | 電気配線、給排水、ガスなどの配線配管 |
仕上げ表 | 内外装材を一覧表にしたもの |
工事仕様書 | 図面に表せない詳細な事項を記述。 標準仕様書と特記仕様書の二ついる。 |
Q10:業者から提示された契約約款で契約して大丈夫?
A:契約約款とは建主、施工者、設計者、工事監理者の工事に関する約束事を定めたもので、契約書とセットになっています。契約約款は本来、両者で協議して作成するものですが、大抵は業者が用意します。しかし、業者が用意する契約約款は、内容が業者に有利に欠かれていることもあり、必ずチェックが必要です。建主に不利になっている項目は書き改めなければなりません。
契約約款のチェックポイントは次のとおりです。
設計図書や仕様書どおりでないときの改造義務
発注者が請負会社にやり直しを請求でき、請負会社がそれに従うことになっているか。
工事の変更・中止
発注者が必要な時、工事内容を変更したりあるいは一時中止や打ち切りができるようになっているか。
損害の負担
完成までに建築中の家や材料に損害が生じた時、請負会社が負担するようになっているか。
瑕疵担保
完成後、施工の欠陥によって瑕疵があるとき発注者が請負会社に補修を求めることができるか。
履行延滞違約金
工事が契約期間より延びたとき、請負会社に違約金を請求できるか。またその金額が書いてあるか(ちなみに住宅金融公庫作成の約款では遅滞日数1日につき請負代金の1000分の1以内となっています)
以上のことから、契約前に契約書、設計図書をチェックすることは非常に重要なことであり、今後のトラブルを防ぐことになります。しかし、建築は専門性が非常に強いため、建主がこれらをチェックするには限度があります。よって、建主に代わって、第三者の専門家などに、この契約書、設計図書で契約してよいかどうかをチェックしてもらう必要があります。
契約書についてのご相談は、 無料電話相談をご利用下さい。